Album
Songs Of A Lost World
2024オルタナティブ · ミュージック
後悔、終末、孤独死の恐怖。ロバート・スミス、ここに復活。
Tracks
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- 26:53
- 34:43
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About this album
「僕の世界は老いてしまった(I know that my world is grown old)」。ザ・キュアーの14作目にして16年ぶりのスタジオアルバム『Songs Of A Lost World』に収録された多くの注目曲の中の一つ「And Nothing Is Forever」でロバート・スミスはそう歌う。アルバムのテーマは、死と死にゆくこと、そして容赦ない時の流れにほぼ集約される。ゆったりとしたテンポで進む収録曲の多くは、スミスが歌い出すまでに何分もかかる。ポップなヒット曲もなければフックもなく、率直に言えば楽しくはない。それもまたザ・キュアーの最も心奪われる作品の一種であり、彼らの名曲の大半と同様に、軽々しく受け止めることのできないステートメントだ。
ゆっくりと幕を開けるオープニング曲でリードシングルでもある「Alone」は、荘厳でもの悲しく、ストリングスの波が寄せては返し、空から鳥が落ちてくるという黙示録的な歌詞が描かれている。しかし主なテーマは孤独死と後悔に満ちた人生の砕け散った欠片、そして我々全員に共通する、死という避けられない結末だ。「これは僕たちが歌うあらゆる歌の終わりだ(This is the end of every song that we sing)」とスミスは歌う。「A Fragile Thing」では、スミスが傷心や心の隔たり、既成事実について歌うにつれ、軽やかに響くピアノの音色が重厚なベースラインに取って代わられる。この曲はアルバムの中で最も1980年代のザ・キュアーに近いかもしれないが、65歳になったスミスがつづる通例どおりの陰鬱(いんうつ)な歌詞には、人生経験から得た重みと、避けられない残酷な現実が同居している。続く「Warsong」は家庭内の争いや苦い後悔に思いを巡らせ、うねるような持続音が胸を締め付けてくるが、4分少々と本作では最も短い曲でもある。
「Drone:Nodrone」は、サウンド的に言えばの話だが、最もキャッチーでアップビートな曲だ。当然、スミスの歌詞に楽しいところは何もない。完全に絶望的な破滅のスパイラルではないにしろ、「僕の答えは君が求める答えじゃない(The answers that I have are not the answers that you want)」や「もう無理だ/どうしたって(I can’t anymore/If I ever really could)」といった歌詞からは、確かに波乱に満ちた関係だと分かる。この曲でリードギターを響かせるReeves Gabrelsは、元Tin Machine/デヴィッド・ボウイのメンバーで、2012年にザ・キュアーに加入していたがスタジオアルバムで演奏するのは今回が初めてだ。「I Can Never Say Goodbye」ではスミスの兄リチャードの死を悼み、 シェイクスピアの文句でレイ・ブラッドベリの小説のタイトルとして広まった「Something wicked this way comes」という言葉が曲の中で繰り返される。(ザ・キュアーは2022年に、この曲をリチャード・スミスが長年住んでいたというポーランドでのライブで初披露している。)アルバムの大半の曲と同様、涙を誘う曲だ。
これほどまでに喪失と人間の死すべき運命を描いた『Songs Of A Lost World』は、ボウイの2016年の遺作『Blackstar』を思い起こさせる。死をテーマにしたアルバムを「Endsong」という壮大で華麗な曲で締めくくることは必ずしも不吉とは言えないが、先のことは誰にも分からない。何はともあれ、スミスはすでに『Songs Of A Lost World』に続く作品を示唆している。次は16年もかからないことを願うばかりだ。